ご相談者:60代の母親 対象者:30代の息子
小柄で優しそうなご婦人が沈んだ様子で座っていました。
緊張感とひっ迫感が重苦しい空間を作っていました。
私がこの方を助けてさしあげなきゃ。
精一杯の微笑を浮かべてSさんは話し始めました。
「何度もあったことだけど・・・」
家出癖のあるご子息。
一年に一度はフラッといなくなり数週間ほどで戻ってくる。
「今回は何だかいつもと違うような気がして。」
そのうちまた土産話でも持って帰ってくるだろう。
そのはずだった。
気が付けば3ヶ月近く経っていた。
真面目でこつこつと働く子なんです。
あまり人付き合いは得意じゃなくて。
いつも気が付けばパソコンの前に座っているんです。
派遣で仕事をしていたのですが、
真面目さが認められて正社員のお話を頂いたって云うのに・・・。
突然、家出する人に多いタイプ。
30代
真面目で目立つことはないが
隅に追いやられているわけでもない。
夢を持つには時間が経ち過ぎ、
食べられない現実があるわけでも無い。
ただ、将来に漠然と不安を感じている年代。
親に甘える年齢はとうに過ぎ、
将来を一緒に切り開けるパートナーがいてくれるわけでもない。
社会人になったからと一人暮らしを始め、
待つ人のいない部屋に戻る日々。
自分がいなくても誰も困らない。
誰も心配なんかしない。
なんという勘違いか。
こんなに憔悴してあふれる涙をこらえて、
「解ってあげられなかった私が悪いんです。」
ご自分を責めているSさんがいる。
こんなにも心配している母がいる。
この方の呪縛を解いてあげないと。
この親子のこころの距離を縮めなければ。
ご子息に変わらぬ母心を伝えなければ。
手がかりはただひとつ。
「札幌」
気が遠くなるような地道な調査。
長年の勘と完成された調査力。
それらを駆使しても少なすぎる情報。
思いはただひとつ。
Sさんの笑顔を見たい。
二ヶ月を裕に過ぎた頃、
目の前に座っていたSさんは満面の笑みでした。
あの憔悴しきった方とはまるで別人のように。
「あの広い札幌でどうやって探し出してくれたのか、
どうしてもお聞きして、お礼を言いたかったんです。
振り込め詐欺ってこんな感じかしらと思いながら、 携帯を握り締めて言われるままに飛行機に乗り、
札幌に着いたら今度はタクシーに乗り、
やっと辿り着いたんです。
居たんですそこに。」
調査部の連絡を受けてからの行動を、
まるで冒険にでも行ったかのように嬉々と話すご様子から、
戻られたご子息との関係が良好であることが推察できました。
ご子息は、
突然睡魔に襲われたり、
起きられなかったり、
電車で乗り過ごしたり・・・
そのことで職場に迷惑をかけること、
ひいてはそれがお母様に迷惑をかけることになる。
お母様がご子息を想っていたように、
ご子息もまたお母様を想っていたのです。
「今はこの病気の治療に専念させ、
少しの間子供の頃のように
甘えさせてあげようと思います。」
それは苦しんでいたご子息を
ご家族で見守る決意のお言葉でした。
再会したからこそ判ったお互いの思いやり。
突然の失踪の原因。
Sさんが行動を起こさなかったら
何もかも判らず仕舞いだったかもしれません。
何よりも手がかりになったのは、
Sさんが話してくれたご子息の性格だったのですから。
もし、あなたの大切な人が突然いなくなったとしても、
ただ悲嘆にくれることは無いのです。
私たちは、いつでもここにおります。
ここで、お待ちしております。
まず、行動を起こしましょう。
明日の為に、今日。
いえ、今すぐにでも・・・。
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